2024年11月23日(土)

安保激変

2015年4月23日

 しかし、安全保障上の脅威となる主体が主権国家だけではなくなりつつあることや、国家の安全保障に脅威を与える空間(ドメイン)に、これまでの「陸・海・空」に加えてサイバーや宇宙などが加わってきていることなどを考慮すれば、「新・ガイドライン」が目指す切れ目のない防衛協力は不可欠だ。この「切れ目のない」協力を可能にするためには、日本政府が昨年7月1日に閣議決定した「集団的自衛権の限定行使」の範囲がどのようなものになるかが、極めて重要になってくるというわけだ。

 後者については、実は、若干の懸念がある。今回のガイドライン見直しで目指すものに日米でズレがあるようなのだ。

 ここ数年、日本にとっての喫緊の安全保障上の課題は、東シナ海における中国からの「武力行使未満の実力行使」にいかに効果的に対応できるか、そして、この「効果的な対応」のために、如何に米国からの日本防衛のコミットメントをより明確化するかだった。これに対して、米国は、国防予算が限られた状態でアジア太平洋リバランスを継続しようとする中、既存の同盟関係をこの地域における安全保障政策のかなめに据えつつも、米国の同盟国間同士の安全保障協力関係の強化や、その延長線上にある米国を含んだ3カ国安全保障協力を推進することで、日本を含む同盟国に、安全保障上、これまで以上に積極的な役割を果たしてほしいという思惑を抱えている。日米豪安全保障協力がこの1~2年で急速に進展したが好例だろう。特に、サイバーや宇宙のような新しいドメインで、日本との協力を進めることや、北東アジアを越える地域における平時からのパトロールのような戦闘行為が起きるような状態を未然に防ぐための国際規範の維持のために活動に日本が積極的に参加してくれることを期待している。

 つまり、東シナ海におけるグレーゾーン事態という「今、そこにある危機への対応」が日本側のガイドライン見直しの動機であるのに対し、米国の動機は「日米同盟の下での日本との防衛協力を、米国がアジア太平洋およびその他の地域で安全保障政策を展開していくための基盤として整備する」ことにあるようなのだ。

ガイドライン見直し作業の完了が
新たなスタート地点

 前述のような米国のガイドライン見直しに臨む姿勢を鑑みても、新ガイドライン策定後に、日本が、アジア太平洋地域内外で果たす役割が拡大することへの米国の期待は高いようだ。4月8~9日にアジア歴訪の最初に日本を訪問したアシュトン・カーター国防長官は、中谷元防衛大臣との会談後に行われた共同記者会見の中で、日米防衛協力のための指針の見直しについて「我々が直面する幅広い課題について、アジア太平洋、世界中で、柔軟に対応していくことが、これで可能になる」ものだという見解を示した。彼は訪日直前にアリゾナ州立大学で行った講演の中でも、新ガイドラインは、日米間の同盟協力を「これまでとは全く違う新しいレベルに引き上げるもの」だと述べているところからも、その期待の高さが窺える。


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