2024年4月19日(金)

田部康喜のTV読本

2016年6月25日

 これは日本文化に通じる。宗教的な色彩を取り除いた禅の境地であり、茶道や華道にも同様のこころがある。

ストレスが“キラーストレス”になるまで

 ストレスがキラーストレスに至らない、5つの防止策として、「コピーイング」と「マインドフルネス」に加えて、ストレスの原因を避ける、笑う、サポートを受けるが必要である、と番組は明らかにしている。

 さて、ストレスはいかにしてキラーストレスになるのか。

 ストレスは、脳の中枢部分に存在する「扁桃体(へんとうたい)」を刺激する。扁桃体からその情報が、副腎と自律神経に伝わる。それによって、副腎はストレスホルモンを分泌して、心拍数を上げかつ血液を固まりやすくする。自律神経は、血管をきゅうっと締めあげて血圧を上昇させる。

 このプロセスは、人類が狩猟時代に猛獣などの外敵から身を守る作用だった。血圧を上げて俊敏な活動つまり逃げやすい体の状態になった。血液が固まりやすくなれば、けがをしたときに有利になる。ストレスが去れば、体はもとに戻った。

 天敵がいない現代において、人類は絶え間のないストレスにさらされて、その反応は心筋梗塞や脳梗塞などの原因となった。

 ストレスが、ガン細胞を増殖させるプロセスも、科学的に明らかになってきた。副腎が出すストレスホルモンが、免疫に関係するATF3という遺伝子に働きかける作用である。ストレスホルモンが大量になると、ATF3遺伝子はガン細胞への攻撃を止めてしまう。ガン細胞は著しい増殖を始めるのである。

 さらに、ストレスは脳の一部を損傷する。ストレスホルモンのなかで、コルチゾールは一定量を超えると、脳の記憶や感情をつかさどる「海馬」(かいば)を構成する神経細胞をむしばむ。うつ病患者の脳の断層写真にそれは現れている。

 しかしながら、ストレスからキラーストレスに至るプロセスは後戻りができない、不可逆的なものではない。対策をとれば、正常な状態に戻れるのが、「意識革命」である。

 ストレスの自己チェックが、番組のホームページからできる。
http://www.nhk.or.jp/special/stress/01.html#check

  
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