2023年2月7日(火)

ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」

2018年8月1日

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佐藤達夫 (さとう・たつお)

食生活ジャーナリスト

1947年5月30日、千葉県千葉市生まれ。1971年北海道大学水産学部卒業。1980年から女子栄養大学出版部へ勤務。月刊『栄養と料理』の編集に携わり、1995年より同誌編集長を務める。1999年に独立し、食生活ジャーナリストとして、さまざまなメディアを通じて、あるいは各地の講演で「健康のためにはどのような食生活を送ればいいか」という情報を発信している。日本ペンクラブ会員、女子栄養大学非常勤講師(食文化情報論)、食生活ジャーナリストの会事務局長。主な著書共著書に『食べモノの道理』(じゃこめてい出版)、『栄養と健康のウソホント』(一般社団法人家の光協会)、『これが糖血病だ!』(女子栄養大学出版部)、『安全な食品の選び方・食べ方事典』(成美堂出版)、『野菜の学校』(岩波書店)、『新しい食品表示の見方がよくわかる本』(中経出版)ほか多数。講演活動では、「あなたはなぜやせられないか?」「生活習慣病は自分で治す」など肥満や糖尿病のメカニズムや、「健康長寿のための食事と生活」という食生活と健康にまつわる最新情報を、医師の視線ではなく、一般の人にわかりやすいことばで提供する。あるいは、健康を保つ上で欠かせない技術としての「安全な食品の選び方」や「食品表示の見方」あるいは「健康にいい野菜の栄養情報」を、やさしく解説する。また、長年、女性雑誌を編集してきた立場から、「男性の家事が社会を変える」「中高年からの二人暮らし」などのテーマで、男性の家庭内自立を説く。

糖質+ビタミンB1+アリシン

夏バテ防止食として、食いしん坊派なら鰻丼、うんちく派ならレバニラ定食をあげるのは、このあたりに理由がありそう(鰻丼とレバニラ定食の件は、私の印象であり、客観的な調査結果ではありません。あしからず)。
ビタミンB1が糖質のエネルギー化を助けて夏バテに効果を発揮する。

念のために書き加えると、レバニラのほうは定食であること(つまりライスがついていること)が肝心。
レバニラ炒めとビールでは、ビタミンB1の効果がイマイチ発揮されない。

では、鰻丼とレバニラ定食は“引き分け”かというと、そうでもなさそう。これも栄養学上の話だが、ビタミンB1の機能をさらに高める成分があるのだ。
それはアリシンという微量成分。
ニンニク、ニラ、ナガネギ、タマネギ、ラッキョウなどネギ類に含まれているアリインという成分が(調理過程で)空気に触れることによってアリシンに変化する。

アリシンは「ビタミンB1が糖質をエネルギー化する機能」をさらに高める働きをする。
そのため「糖質+ビタミンB1」という組み合わせよりも「糖質+ビタミンB1+アリシン」という組み合わせのほうが夏バテには効果的、という理論が成り立つ。

夏バテには鰻丼よりもレバニラ定食に“分がありそう”だ。
ブタの冷しゃぶ(タマネギつき)、ポークカレー(ラッキョウつき)などでも同様の効果は期待できる。

対策としては「食欲がでる物を適量食べる」

以上が栄養学から考察した論理だ。
一方で、別の見方も必要になる。
それは、たとえば「鰻丼やレバニラ定食を食べた人は、食べない人に比べて夏バテになりにくいのかどうか」という(疫学上の)検証である。

専門家によると、「その証拠は必ずしも充分とはいえない」らしい【※1】
近ごろ流行の言葉で表現すると「エビデンスが確かではない」ということになる。
しかしだからといって、「上の栄養学上の理論が間違っている」ということではない。
そちらの(間違っているという)証拠もないから。

「じゃ、結局どうしろっていうの?」といいたくなるだろう。
いらだつ気持ちもわかるが、ここはひとつ、基本に戻ってもらいたい。
最初に書いたように、夏バテは「栄養・運動・休養の3つが傷害されることによって引き起こされる」のだから、これを正せばいい。

栄養のことでいえば、暑さにめげずに鰻丼やレバニラ定食が食べられるのであれば、それに越したことはない(鰻丼は予算の問題もあるが)。
もし、何らかの原因で「そんな暑苦しい物は食べたくないけど、ソーメンなら喉を通りそう」というのであれば、それでもいい。
何も食べないよりは、はるかにましだから・・・・。

ただし、ソーメンばかり続けるのはよくない。
涼しい場所を選ぶとか、ビールの飲み過ぎを控えるとかの工夫をして、主食だけの食事ではなく、主菜(肉や魚)や副菜(野菜類)もそろった食事をできるだけするように心がけよう。
いつも同じ物ばかり食べているのはよくない。
これは、鰻丼やレバニラ定食でも同じこと。

肝心なことは(いつもこのコラムで書いてあるとおり)「バランスのよい食事を適量とること」につきる。
逆に、夏バテ予防だからといって、大量のサプリメントをとったり、ニンニクだけを山ほど食べたりしても効果はない。

【※1】参照『データ栄養学のすすめ』(著:佐々木敏・刊:女子栄養大学出版部)124ページ

  
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