WEDGE REPORT

2021年5月31日

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グラント F・ニューシャム

元米海兵隊大佐・日本戦略研究フォーラム上席研究員

1956年、米国バージニア州生まれ。プリンシピア大学卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校法科大学院修了。米太平洋海兵隊予備役作戦参謀および情報参謀、駐日米国大使館海兵隊武官を歴任。2013年10月より現職。
 

台湾の孤立を終わらせ
支援することが求められる

 米国は今、何をすべきか?

​─​─ 何十年にもわたって台湾の軍隊は孤立してきた。特に緊急性が高いのは、彼らをもう孤立させないように支援することだ。台湾海軍陸戦隊の少人数の1隊が17年にハワイで米海兵隊と行った訓練などを除くと、40年以上、米国と台湾の軍隊は共同訓練を実施していない。この孤立を終わらせることが、台湾の軍事能力を向上させ、台湾の人々と指導者への心理的な後押しとなり、憂慮すべき状態にまで弱体化した台湾の防衛力を向上させる動機付けとなる。

 では、日本は何をすべきか?

​─​─ 日本が直面している危機は明らかだ。中国の台湾統一の意思は固く、それが現実になれば、日本の経済、領土、さらには国家としての独立さえも危険に晒されるだろう。そうならないためには、自衛隊の能力を強化し、日米両軍を完全に統合し、台湾に対して単なる言葉だけではない明示的な支援を提供すべきだ。

 75年間にわたって米国に保護されてきた日本は、国内だけでなく、アジア地域においても米国に過度に依存するようになった。台湾防衛は日本にとってきわめて重要であるにもかかわらず、日本は台湾に対して意味のある支援をほとんど行ってこなかった。代わりに米国が「面倒を見る」と日本は期待してきた。

 しかし残念ながら、米国はもはや単独でアジアやその他の地域の「面倒を見る」ことはできない。日本は軍事力強化のため抜本的な対策を講じる必要がある。ポジティブな面についていえば、日本が軍事能力の強化に努めるほど、日米同盟は強化されるだろう。自衛隊の能力が向上すれば米軍の戦闘力も高まり、日本や周辺地域の共同防衛にも資する。さらに中国に対する牽制にもなると期待できる。

 また日本がその軍事力を真に向上させる(そしてそのために予算を投じる)ことで、政治的・心理的に日米関係の「バランス」が改善され、「日本がただ乗りをしている」というワシントンの認識を原因とした摩擦は減るだろう。

日本を揺るがす「地殻変動」
もう無視できない

 日本単独では中国に対する防衛は無理だろう。中国の(現在および将来的な)軍事力は、日本が合理的な努力で獲得できるものを上回る。しかし強化された自衛隊と米軍の能力を組み合わせれば、日米両国の勝算は上がる。それを実現するため、日本は以下の7つの具体的なステップを踏まなければならない。

1:現在のままの自衛隊では戦争ができないことを認識する。自衛隊は深刻な敵と実際に戦うための装備・編成を持っておらず、そのための訓練もされていない。中国は深刻な敵だ。驚く日本人(および米国人)が多いかもしれないが、これは本当のことだ。自衛隊は考え方をがらりと変え、この問題に取り組む必要がある。

2:陸海空の各自衛隊がともに行動できるよう、統合運用能力を開発する。これは実効性のある現代的な軍隊の必須条件だ。

3:防衛費を増額して賢く使う。防衛費は今後5年間、年10%ずつ増加させるべきであり、特に要員強化を最優先で行う必要がある。14年度以降、自衛官候補生の採用者数は計画数を下回っている。自衛隊員は献身的、専門的、勤勉であり、自国をきわめて大切に思っている。彼らは適切な俸給と処遇を受け、自衛隊に入隊することは誇るべきことであり、国民の尊敬の対象となるべきだ。さらに訓練予算も増やす。要員と訓練が充足されてはじめて、真に必要な装備に資金を振り向けるのがよい。装備は一貫性のある国防計画とは無関係な、ピカピカで高価なだけのものであってはならない。

4:米軍と自衛隊を完全に統合し共同で日本を防衛する。米軍と自衛隊の幕僚が日本と周辺地域防衛のために必要な活動を立案し実行に移す本部をすみやかに設置する。そして全体的な防衛計画の一部に台湾防衛を含める。

5:南西諸島防衛も日米間で完全に統合する。南西諸島全域、台湾近辺で訓練、演習、哨戒を共同で行い沖縄に統合本部を設置する。

6:米国・インド・豪州を合わせた「クアッド」およびパートナーの国々の軍とともに、自衛隊を定期的にインド太平洋全域に展開する。

7:台湾に関して以下の措置を講じる。台湾の事実上の独立は日本の安全保障上きわめて重要であり、少なくとも中国の軍事力や強制によって現状変更されないように日本は必要なことを行う、と宣言する「台湾関係法」を起草する。

 また、航空自衛隊と台湾空軍をグアムで一緒に訓練をさせ、海上自衛隊と台湾海軍が定期的な訓練活動を開始したり、ミサイル防衛活動および対北朝鮮制裁の違反監視活動に台湾を招く。

 あるいは中国空軍が威嚇のために台湾周辺を飛行した際、沖縄の航空自衛隊機を米空軍機などとともに護衛任務で台湾空軍機に合流させる。最近合意された米台の沿岸警備に関する作業部会に海上保安庁を参加させる。

中国軍による台湾周辺地域での軍事演習を批判する台湾当局 (REUTERS/AFLO)

 このような記事を書く必要があること自体驚くべきことであり、気の滅入ることだ。中国が脅威であることは10~20年前から明らかだったが、残念ながら、日本政府、企業、学界、メディアなどあまりにも多くの人が、日本と日本人を土台から揺るがす恐れのある「地殻変動」の予兆を無視してきた。

 やるべきことをやる。さもなければ、船や飛行機を運航する際や、近隣の国々と交易をしたり、台湾・南シナ海・南西諸島を訪れる際にも中国政府の許可を求めることになると覚悟すべきだ。あるいは、ほとんど何をするにも中国政府の許可が必要になるかもしれない。まだ手遅れではないが、残された時間は少ない。

 だから日本よ、目を覚ますのだ!

Wedge6月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■押し寄せる中国の脅威  危機は海からやってくる
Introduction  「アジアの地中海」が中国の海洋進出を読み解くカギ
Part 1         台湾は日米と共に民主主義の礎を築く        
Part 2       海警法施行は通過点に過ぎない  中国の真の狙いを見抜け  
Column    「北斗」利用で脅威増す海上民兵
Part 3       台湾統一  中国は本気  だから日本よ、目を覚ませ! 
Part 4     〖座談会〗 最も危険な台湾と尖閣  準備なき危機管理では戦えない
Part 5       インド太平洋重視の欧州  日本は受け身やめ積極関与を
Part 6       南シナ海で対立するフィリピン  対中・対米観は複雑
Part 7         中国の狙うマラッカ海峡進出  その野心に対抗する術を持て

  
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◆Wedge2021年6月号より

 

 

 

 

 

 

 

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