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2021年10月26日

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大場紀章 (おおば・のりあき)

ポスト石油戦略研究所代表

2008年京都大学大学院理学研究科博士後期課程を単位取得退学。エネルギー・環境分野の調査研究を行うシンクタンク・テクノバに入社。15年よりフリーとなり、21年より現職。株式会社JDSCフェローなども務める。

日本にはさらなる「負荷」が

 そして、日本のガソリン価格に大きく影響するもう一つの要因である為替の行方は、こちらもさまざまな要因があるが、世界的な半導体不足で自動車生産量が縮小されているなど、円安になっても輸出が増えないために調整が働かず、さらに円安になるというスパイラルに陥っていると指摘されている。

 仮に原油価格が100ドル/バレルとなり、為替が116円/ドルになったとすると、精製コストと販売マージンが現在と同じと仮定して、ガソリン価格は180円/リットルに達する可能性がある。

 一方、ガソリン平均価格が3カ月間連続で160円/リットルを超えた場合、揮発油税の上乗せ税率分である25.1 円の課税を停止する、いわゆる「トリガー条項」(租税特別措置法第89条の「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止」)が適用される可能性がある。

 これは元々、09年に発足した民主党政権の公約「ガソリン税等の暫定税率廃止」が背景にあり、後に財源不足から見送りとなったが、代わりに10年に「所得税法等の一部を改正する法律」を成立し、そこにトリガー条項が盛り込まれた。しかし、東日本大震災が発生し、今度は復興財源を確保するという理由により11年4月27日から凍結されている。

 トリガー条項の凍結を規定している「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律 第44条」には、「東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する」とあり、世論の高まりと政権によるこの条文の解釈次第で、トリガー条項の発動はあり得るだろう。

 また、そうでもしなければ、原油価格の高騰は悪性のコストプッシュインフレとなり、ボディブローのように経済を圧迫する。特にガソリン消費の多い地方や、灯油を暖房として使う地域ほど家計に対する影響は大きくなる。そうなってしまえば、次にガソリン価格が下がるのは、日本経済が停滞して需要が落ち込んだ時ということにもなりかねない。

 脱炭素を語るのも重要だが、足元の石油供給問題もしっかりと見据えた上で、議論して頂きたいものだ。

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■脱炭素って安易に語るな
PART1 政治主導で進む脱炭素 日本に必要な〝バランス感覚〟
編集部
PART2 おぼろげな46%減を徹底検証〝野心的〟計画は実現なるか
間瀬貴之(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)
永井雄宇(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)
PART3 高まる国家のリスク それでも再エネ〝大幅増〟を選ぶのか
山本隆三(常葉大学名誉教授)
PART4 その事業者は一体誰?〝ソーラーバブル〟に沸く日本
平野秀樹(姫路大学特任教授)
PART5 「バスに乗り遅れるな」は禁物 再び石油危機が起こる日
大場紀章(ポスト石油戦略研究所代表)
PART6 再エネ増でも原発は必要 米国から日本へ4つの提言
フィリス・ヨシダ(大西洋協議会国際エネルギーセンター上席特別研究員)
PART7 進まぬ原発再稼働 このままでは原子力の〝火〟が消える
編集部

  
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