日本にはさらなる「負荷」が
そして、日本のガソリン価格に大きく影響するもう一つの要因である為替の行方は、こちらもさまざまな要因があるが、世界的な半導体不足で自動車生産量が縮小されているなど、円安になっても輸出が増えないために調整が働かず、さらに円安になるというスパイラルに陥っていると指摘されている。
仮に原油価格が100ドル/バレルとなり、為替が116円/ドルになったとすると、精製コストと販売マージンが現在と同じと仮定して、ガソリン価格は180円/リットルに達する可能性がある。
一方、ガソリン平均価格が3カ月間連続で160円/リットルを超えた場合、揮発油税の上乗せ税率分である25.1 円の課税を停止する、いわゆる「トリガー条項」(租税特別措置法第89条の「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止」)が適用される可能性がある。
これは元々、09年に発足した民主党政権の公約「ガソリン税等の暫定税率廃止」が背景にあり、後に財源不足から見送りとなったが、代わりに10年に「所得税法等の一部を改正する法律」を成立し、そこにトリガー条項が盛り込まれた。しかし、東日本大震災が発生し、今度は復興財源を確保するという理由により11年4月27日から凍結されている。
トリガー条項の凍結を規定している「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律 第44条」には、「東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する」とあり、世論の高まりと政権によるこの条文の解釈次第で、トリガー条項の発動はあり得るだろう。
また、そうでもしなければ、原油価格の高騰は悪性のコストプッシュインフレとなり、ボディブローのように経済を圧迫する。特にガソリン消費の多い地方や、灯油を暖房として使う地域ほど家計に対する影響は大きくなる。そうなってしまえば、次にガソリン価格が下がるのは、日本経済が停滞して需要が落ち込んだ時ということにもなりかねない。
脱炭素を語るのも重要だが、足元の石油供給問題もしっかりと見据えた上で、議論して頂きたいものだ。
地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。
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