田部康喜のTV読本

2022年1月29日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 NHKスペシャル「オミクロン株 “第6波の行方”」(初回放送・1月25日:NHK+見逃し配信 2月1日午後11時15分まで)は、新型コロナウイルスによるパンデミックを映像と情報によって、同時進行的に記録し続ける、放送の原点ともいうべき番組だった。

(Kesu01/gettyimages)

古書、映像……記録され続ける感染症

 世界全体を襲った、インフルエンザの「スペイン風邪」のパンデミックから、100年余りが経って、世界は再び恐怖と不安の奈落の底に落された。

 このインフルエンザによる死者は、1919年の第1波から20年の第3波にかけて、全世界で数千万人にのぼったと推定されている。日本の死者は、約38万5000人である。そのわずか3年後に起きた、関東大震災による死者・行方不明者は約14万人。東京大空襲のそれが約10万人だったことを考えると、社会をいかに揺さぶったかが推測できる。

 戦前の内務省衛生局編によるスペイン風邪の記録『流行性感冒』が発見されたのは偶然だった。感染症が専門の西村秀一医師が、古書店が売り出していたのを購入した。このパンデミックに関する日本の文献は欧州に比べると、極めて少なかった。この内務省の記録は「第1級の2次資料」として、『東洋文庫』から2008年に出版された。

 「映像の世紀」である20世紀を超えて、テレビメディアがいま、新型コロナウイルスのパンデミックを記録している。かつて、TBSの出身者たちが、70年安保闘争にからんで退社して、テレビマンユニオンを結成した。メンバーたちのテレビにかけた誇りは『お前はただの現在にすぎない』(萩元清彦、村木良彦、今野勉・朝日新聞出版社刊)という言葉に込められている。

 「オミクロン株 “第6波の行方”」は、まさに「現在」を記録していこうという、テレビマン魂の気迫にあふれた作品だった。

 国内外の「現在」にカメラは入っていく。

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