2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2023年2月14日

 今後10年間で投資が行われる22分野が例示されている。例えば、自動車産業では電動自動車に15兆円、研究開発に9兆円、蓄電池製造・開発に7兆円、電動車のインフラ投資に1兆円など合計34兆円の投資の実施が想定されている。自動車以外の主な分野への投資額を表-1に示した。

 支援のためGX経済移行債が発行され、先行しての投資による支援と合わせ規制・制度措置も行われる。移行債の償還は新たに導入される「成長志向型のカーボンプライシング(炭素排出に価格をつける)」により行われる。成長志向と呼ぶのは、炭素に価格が付くことにより、事業者が脱炭素の投資を前倒しで取り組むことが期待されるからだ。

 CO2排出量が多い事業者間での排出量取引を26年度から開始し、33年度から国よる排出量の売却がオークションにより開始される。28年度から輸入燃料などへの「炭素に対する賦課金」制度が導入される。現在の再エネ賦課金額、化石燃料への課税額の減少に合わせ導入されるので最終的な消費における増加額はない見込みだが、要は再エネ導入量が減少し賦課金額が減少に転じても最終消費者が負担する額は減少しない。

 経済成長戦略として期待されているGX投資だが、10年以上前に当時の民主党政権も同じような成長戦略を打ち出していた。

繰り返されるグリーン成長戦略

 1994年に初めて導入された少子化対策と同様に、グリーン成長戦略も繰り返される。2010年6月、菅直人政権時に閣議決定された新成長戦略の柱は、「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」だった。世界ナンバーワンの環境・エネルギー大国を目指すとした戦略の20年までの目標は、50兆円超の環境関連新規市場と140万人の環境分野の新規雇用だった。  

 結果は、中国で太陽光パネルと風力発電設備の大きなビジネスが成長したことだった。中国は世界の太陽光パネルと洋上風力発電設備の7割以上を供給する環境大国になった。日本は、中国企業に大きな市場を提供しただけだった。

 GX基本方針には次のように書かれている。「欧米各国は国家を挙げた脱炭素投資への支援策、新たな市場のルール形成の取組を加速しており、GXに向けた脱炭素投資の成否が、企業・国家の競争力を左右する時代に突入している」。

 要は、欧米諸国は脱炭素に向け投資を行っているので、日本も負けずに投資するということだ。そうしなければ、有利な補助金、税制が用意される国に企業が移転する。特にエネルギー自給国米国は、エネルギー価格の面で有利な立場に立っている。

 150兆円の投資が打ち出された背景には、欧米に対抗し脱炭素の技術開発を進めることだが、欧米諸国と日本の財政状態は異なっている。日本のGX投資案は民間の投資に依存しているが、欧米では政府の手厚い支援がある。


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