不足しているのは専門職と現業職
図2は有効求人数と有効求職者数の差を職業別に示したグラフである。職業の分類として図では専門職、事務職、販売職そして現業職に大きく分けている。専門職には技術職を含む。
統計や資料によって呼び方はさまざまだが、ここで現業職は技能職ないし労務職と呼ばれるものを含む。専門職、事務職、販売職が俗にいうホワイトカラーで、現業職はブルーカラーにあたるが、あくまで目安だ。
まずは求人超すなわち人手不足の職業が多いことがわかる。比較可能な12年度と21年度を比べてみたが、人手不足の度合いが高まったことが確認できる。特に医療助手・介護、福祉専門職、建設・土木作業において求人・求職ギャップが大きくなった。工場労働を中心とする生産工程の職業では求職超から求人超に転じた。
もう1つ、ひときわ目立つのは事務職で求職者数が求人数を上回っていることだ。21年度の月平均で事務職は約30万人の求職超となっている。
図2の元データから計算した有効求人倍率はコロナ禍の影響もあって全体で1.05倍だった。ただし事務職の倍率は0.37倍の一方で、求人超の職業の求職と求人をそれぞれ合算して計算した倍率は2.17倍と大きな格差があった。
このように人手不足の要因としては求人と求職のミスマッチ面も大きい。ミスマッチについては人手不足が問題になる前の12年度もさほど変わらない。
図2を上からみると、一番上の理系技術者が人手不足である。この分類には建築・土木技術者、情報処理・通信技術者などがある。
国際競争はもちろん品質に対する世間の目も厳しさが増す中、求められる専門性や技術力の水準は高度化していく。デジタルトランスフォーメーション(DX)もこうした流れに拍車をかける。情報技術関係で要求水準が高まっているのは、最近のマイナンバーカードに関する騒動をみてもわかる。
次は医療福祉系である。医師、看護師など医療専門職、介護サービス関連の人手不足が厳しい。コロナ禍がピークだったころのひっ迫ぶりは記憶に新しい。
それに加えて医師にはいわゆる「2024年問題」がある。働き方改革関連法は19年4月に施行されているが、医師や後述の自動車運転については施行が5年猶予されていた。24年からは医師にも年間時間外労働時間の上限規制が施される。
介護サービスには「2025年問題」もある。25年は1950年3月生まれの最後の団塊世代が75歳になる年だ。
厚生労働省が20年のデータをもとに調べたところによれば、75歳になると要介護に認定される人が増えてくる。75歳以上80歳未満の層の要介護認定の割合は約12%だが、それ以降は年齢を重ねるほど高まり、85歳以上で6割弱となる。これまでアクティブシニアを謳歌していた世代が、これからは介護の対象になる。人手不足問題は当面解消しそうにない。