2023年9月15日付のウォールストリート・ジャーナル紙に、セス・ジョーンズ戦略国際問題研究所(CSIS)上級副社長は、「米国がウクライナを見捨てることを台湾は危惧」との論説記事を掲げ、米国の対ウクライナ支援は米国の決意に対する試験であり、それが減ればアジアの同盟国の対米信頼が落ちるので、米国はウクライナ・台湾の両面作戦を考えるべきだと論じている。
ウクライナ支援への反対は、米国は台湾の防衛に集中すべきとする米国議員の間に広がりつつある。彼らは、資源は有限で対ウクライナ武器輸出は台湾の犠牲の上に成り立っており、欧州での戦争に長期間集中するのは中国を利すると考えている。
これらの主張は誤解に基づくもので危険だ。豪州、日本、韓国、台湾の政府要人は、米国のウクライナ支援崩壊はアジア全体に深刻な波及効果を持つと指摘する。台湾の高官は、米国のウクライナ支援減少は米国の決意に対する台湾の懸念を高めると警告する。
米国が戦争に部隊を派遣すると信じる台湾人の割合は減りつつある。バイデン大統領はしばしば米国は台湾防衛に駆け付けると言っているが、同政権の政策は台湾への再保証に失敗した。バイデン大統領はウクライナへの米軍派遣の可能性を排除し、台湾では懸念が高まった。
一方、習近平は、武力行使を含め、台湾を手に入れるため全ての手段を維持すると明言した。中国は、日常的に台湾周辺で軍事的圧力を強化している。
米国は中露どちらかを選ぶ必要があるとの主張は間違った二分法だ。どちらも権威主義的体制で相互に協力している。
中露は、ロシアのウクライナ侵攻以降軍事、経済、外交関係を深化させ、7月に両国は日本海で海軍合同演習を行い、数カ月前にはアラスカ沖で海軍作戦を実施した。
米国には躊躇する余裕は無い。米国は中露に対抗するため台湾とウクライナを含む同盟国パートナー国の協力による2正面戦略を作る必要がある。これら二正面は大きく異なる戦争なので、異なった兵器、訓練計画、軍事態勢が必要だ。インド太平洋はほとんど空海戦だが、欧州は主に空陸戦だ。
米国の同盟国はウクライナを西側の決意へのテストとみている。長期的関与はロシアを弱体化させウクライナを助けるが、これは同時にアジアでの抑止を強化し台湾、日本、韓国、豪州に、米国は引き続き圧倒的勢力で信頼できるパートナーだという保証を与える。