なぜノルウェーではシシャモが大漁になるのか?
19年からノルウェーとアイスランドは、一時的にシシャモ漁を資源回復のためにそれぞれ2~3年間禁漁していました。両国の資源は系統群が異なります。ノルウェーが資源を管轄するのは、北部のバレンツ海の漁場です。その産卵場はノルウェー北部(ロシア含む)で、アイスランドが漁獲するシシャモは、アイスランド沿岸で産卵します。
その甲斐があって、21年にアイスランド、22年にはノルウェーも資源量が順調に回復して解禁となりました。そしてシシャモが再び大量に日本市場に供給されています。
日本の国産シシャモについても後で述べますが、回復の兆しはありません。漁獲量が減った原因として、日本でよく海水温の上昇が言われます。しかし、北欧の海でも海水温上昇の影響があります(「過去最低の水揚量と海水温上昇を比較すると驚くかも知れません - 魚が消えていく本当の理由」)が、大きく回復しています。海水温のせいであれば、日本同様に減り続けるはずではないでしょうか? また、3カ国とも産卵期に狙いを定めて漁をしています(「タラコを食べても魚は減らない? 産卵期の漁業は問題あるのか? - 魚が消えていく本当の理由」)。しかし減るだけで資源が回復しないのは日本だけです。
非常に厳しく見えるシシャモ漁の解禁条件
下のグラフは、ノルウェーとロシアでシェアしているバレンツ海のシシャモの資源量推移です(単位1000トン)。グラフ縦軸であるSSBというのは、成熟した親魚の資源量(産卵親魚=以下親魚)のことです。資源量が年によって大きく増減していることがわかります。
点線の数量を下回ると資源回復のため禁漁措置が取られています。この点線の基準は4月時点で、親魚が95%の確率で20万トンという非常に厳しく見える基準です。
19年から21年にかけて禁漁したが、それぞれの親魚量は31.7万トン、8.5万トン、15.6万トンもいました。いまの日本でこの状態で禁漁したら「なぜ魚がたくさんいるのに獲らせないのか!!」と大騒ぎになることでしょう。しかし資源管理の知識が浸透しており、漁業者は自分で自分の首を絞めるような反対はしません。
さらに漁獲枠設定の際には、生物多様性が考えられており、マダラなどに捕食される数量を30万トンと算出しています。
日本の場合は、シシャモにTACもありませんし、シシャモを捕食する魚のことも考慮されていません。このため、シシャモだけでなく、それをエサとしている魚の資源量にまで悪影響を与え、さまざまな魚種が減る悪循環を起こしてしまうのです。
バレンツ海での科学的根拠に基づく資源管理は、回復した膨大な資源量により漁獲量が復活し、地域経済・そしてノルウェーに大きく貢献しています。