2024年12月8日(日)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年10月31日

資源管理の基本は同じ

 日本のシシャモ(学名Spirinchus lanceolatus・写真左)と北欧のカラフトシシャモ(学名Mallotus villosus・写真右)では生態が異なります。前者は川を遡上して産卵、後者は海で産卵します。ただし、資源を持続していくための管理方法の基本は同じです。北欧と日本では種類が違うシシャモではないか? という問題ではありません。

日本のシシャモ(左)と北欧のカラフトシシャモ(筆者提供)

 日本では、持続可能な開発目標(SDGs)の14.4で示されているMSY(最大持続生産量)に基づく水産資源管理が十分にできていないのです。なお20年の漁業法改正により、MSYに基づく管理がようやく埋め込まれました。 

 日本のシシャモ漁の場合は、そもそも科学的にどれだけの親魚量を残すか? という数量管理ではありません。資源量が減って供給が減れば価格が上昇します。ですから漁期中に出来るだけたくさん獲りたいという意識が働いてしまいさまざまな魚種で、悪循環が続いています。

生態系も考えた水産資源管理を

 シシャモを食べるのは人間ばかりではありません。マダラをはじめとした、多くの魚の貴重なエサでもあります。ノルウェーではシシャモの漁場でマダラが混獲されたりすると、その漁場は禁漁区にするなど厳格に管理されています。

 エサ資源が減れば、そのエサを食べていた魚の資源も減ります。残念ながら日本では、こうした他の魚のエサとなる分量の配慮に関する報道は聞きません。生物多様性も十分考慮することが重要であることに気付いていただければと思います。

 微力ながらこのような発信を通じて、漁業者の方の理解も確実に増えてきています。やるべきことは、国が進めている資源管理政策において、漁獲枠の設定などに反対するのではなく、むしろ早急に進めてもらうことです。さもないと、魚が減るという社会問題がさらに大きくなってしまいます。

連載「日本の漁業 こうすれば復活できる」では、日本漁業にまつわるさまざまな課題や解決策を提示しております。他の記事はこちら
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