2024年12月9日(月)

人口減少社会とスポーツと子どもと

2024年2月11日

 晴天に恵まれた2023年12月10日。東京・東伏見の早稲田大学グラウンドでは、児童たちが人工芝の上を元気に駆け回り、柔らかいボールを打ったり、捕ったりと〝野球〟を楽しんだ。

早稲田大学のグラウンドで、野球ではなく、鬼ごっこが行われた(筆者撮影)

 早稲田大学野球部OB会などが主催した小学生を対象としたイベント「鬼ごっこ×野球~WASEDAであそぼう~」の様子だ。低学年を中心に約120人の児童が保護者らと参加。イベント内では、野球部の4年生が投げる速球や、外野フェンスの先にあるネットまで届くトス打撃に、子どもたちからもどよめきが沸いていた。

 目的は「野球を指導する」ではない

 昨年までは早稲田の取り組みだったが、今回は活動の輪が広がり、東京六大学野球リーグの全てのチームがグラウンドを開放した。

 「鬼ごっこ」を前面に出し、本格的な野球指導を行わず、まずはグラウンドで遊びまわり、ボールに親しんでもらうことを趣旨にしたのは、明確な狙いがある。

 ある野球部OBはこう強調した。

 「このイベントは野球界が野球のために活動するのでなく、社会課題に挑戦するテーマを持っています」

 参考資料として添付されていた資料に目を通すと、OB会を中心としたイベントの変遷をたどると、15年は「野球を指導する」をテーマに、プロ選手による上達を目指す指導が行われていた。しかし、翌16年からの4年間は「子供を野球に返そう」をテーマに「メンコ投げ」など野球〝以前〟の遊びを取り入れた。そしてコロナ過が明けて3年ぶりに開催された今回のテーマは「あそび場をつくろう」。テーマから「野球」は消えていた。

 背景にあるのは、子どもたちの「遊び」との関係だ。ある調査では、1日の外遊びの時間が35年間で30%以上減少し、別の調査では平日に外で遊ばないという小学生が8割近くに上っている。

 塾などの習い事やゲームに費やす時間が増え、公園で遊ぼうにもキャッチボールは禁止され、子どもがはしゃぐ声までも煙たがられる。結果、子どもたちの体力は低下し、肥満児童も増えている。

 外遊びの機会をどう確保するか。都内でも広いスペースを持つ大学がグラウンドを提供するという取り組みに、スポーツ庁の担当者も視察に訪れた。減り続ける子どもたちの遊び場、そして遊ぶ機会の減少が深刻な中、野球をやろうというハードルはさらに高くなっている。実際、全日本軟式野球連盟が登録選手数を集計した2017年度は約20万5000人だったが、22年度は約17万人にまで減少している。


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