2024年12月20日(金)

モノ語り。

2024年4月6日

 熊本県菊池市。水資源が豊かな町です。隣の菊陽町では、半導体製造の世界ナンバーワン企業である台湾積体電路製造(TSMC)の工場が建設され経済的には大きな期待が高まっていますが、水資源への影響を心配する人もいるそうです。私にとって菊池市は、地域づくりに本格的に参加したはじめてのまちです。

(写真・鈴木優太)

 それ以来15年〝マブダチ〟として付き合っているのが、渡辺商店「自然派きくち村」を運営する渡邉義文さん(51)こと、「よっちゃん」です。先輩ですが、同じ経営者として切磋琢磨する関係でもあります。もともと渡辺商店は酒店でしたが、25年ほど前によっちゃんが、ネット販売も武器にして、扱う品物の幅を広げていきました。

 「1990年代の半ば頃から環境問題を意識するようになりました。同時にコンビニが増えていく中で、酒屋という業態の将来についても考えている時に、地元で生産された有機栽培のコメを売ってみないかと言われ、やってみたんですが、全然売れませんでした」

 売れないのは「自分がコメのことを知らないからじゃないか?」と、よっちゃんは考え、自分で稲作をはじめます。すると、すぐに、九州の品評会で優秀賞を獲得したのです。

 「3年目から無肥料栽培の自然栽培でつくるようになりました。肥料を使わないと収量が落ちると聞いていたのですが、そんなことはありませんでした。戦後、機械化、肥料や農薬を使用するなどして農業も製造業のようになることが求められましたが、本当は昔からやってきたことに大切なことが残されているのではないかと考えるようになりました」

 このコメをどうするか。よっちゃんは米焼酎を造ることにしたのです。蔵元に頼み、水も菊池から持ち込んで造ってもらいました。これが単なる酒店ではなく、さまざまな商品を開発する小売店への転身のきっかけとなったのです。「1年に3つずつ商品開発を進めれば、10年後には30個になる」という気持ちではじめたそうですが、今や品数は500種類を超えています。


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