ころころと政府が交代するのはわが国民も慣れっこになってきてはいるが、欧州の大国フランスではそれに輪をかけたような政治の混迷が続いている。
9月初めに議会による政府不信任でフランソワ・バイル内閣が倒壊し、その翌日にマクロン大統領から首班指名を受けた大統領の側近中の側近の若手39歳のルコルニュは組閣に難航。約4週間におよぶ与野党および関連労組などと交渉を重ねてようやく10月5日夜に組閣リストを大統領に提出したが、その14時間後には自ら辞任を表明した。フランス史上前代未聞の最短の14時間しか持たない政府だった(1924年フレデリック・マルセル政府1日間、50年アンリ・クイユ政府2日間)。
しかしその4日後に、同氏は再び首相指名を受けて、改めて組閣した。わずかの間に同じ人物が連続して首班指名を受け、続けて二つの内閣を組閣した。またもや前代未聞の大政治活劇だが、それは諸政治勢力の錯綜した関係の表れでもある。
早速、極右・極左勢力を中心とした野党は議会での内閣不信任提案や大統領罷免を主張した。これに対してルコルニュ首相は機先を制するように社会党の主張する年金法停止を所信演説で約束。当面の危機を切り抜けようと切り札を切った。
果たしてこれで新政府は安定するのか。難題が山積する中、フランス政治の混迷の出口は依然として不透明だ。
辞職・再任劇の真相
ルコルニュ首相が閣僚リスト提出直後に辞任した理由は、「党派的利益のことしか考えておらず、誰もフランスのことを考えていないので、首相になろうとしないだろう(政治運営はできない)」という発言に尽きた。それは絶対多数派が存在しない少数与党の求心力の喪失とフランス政治の歴史的特徴でもある多党分立の政治情勢が加速化していることを意味する。
