2026年6月1日(月)

Wedge REPORT

2026年6月1日

ハワイの農業から見える
日本の未来図

 ハワイの農業普及員ジェンセン・ウイエダさんは「ハワイの農家は中小規模が多く、彼らは決して豊かなわけではない」と話す。ハワイは4ヘクタール以下の農家が64%、20ヘクタール以下が90%と、全米と比べると中小農家の割合が高い。

 その理由として前述の大規模のプランテーション型法人の撤退と島嶼特有の地形から大規模化が難しいことが挙げられる。

 オアフ島北部のDiamond Island Farmでは、有機農業の一つであるリジェネラティブ農業を実践する。土壌の有機物を増やして自然環境を修復・再生する農法だ。

 この農場を経営しているケアリー・ボンさんは、オレゴン大学で環境学と社会学の学位を取得している方だった。民間企業(太陽光産業)に就職後、研修プログラムを受講して農業を始め、数年のキャリアのようだ。わずか1エーカー(約0.4ヘクタール)で野菜を栽培し、ファーマーズマーケットやネットで販売している。「AIは事務作業には使うが、営農には使わない」といったこだわりを見せる。ハワイの代表的かつ典型的な小規模農家の一つといえそうだ。

 ハワイの中小規模の農家所得は他の産業より低く、これらの中小規模の農家を州の農業普及員が支援している。

 ジェンセンさんは、スマート農業の導入について「高価格のスマート機器の購入は難しいので、2万円程度の自作自動灌水装置を紹介している」と話す。

 農家がスマート農機を安価で自作したり、ホームセンターの機器だけでハウスを自作できるように、普及センター事務所がある都市園芸センターで展示し、多くの農家が活用できるようにしている。

 「一度失われた農業は簡単には戻らない」

 ハワイの生産者たちからは、こんな声も聞こえてきた。

 ハワイの農業の現状は、日本にとって対岸の火事ではない。むしろ、日本の農業の未来図であり、危機を先取りしているのではないかと筆者は思うのである。現地滞在中、何度も聞かされた「日本の農業とハワイの農業には共通点が多い」との指摘は、データと現場の様子からも裏付けられる。農業を志す人も先細る中、農地も急に増やすことはできないという。農業に限らず、あらゆる分野にもいえることだが、一度途絶えた技術者や技術力を取り戻すことは容易なことではない。元に戻すには長い時間が必要である。

 また、輸入品に過度に依存し、住民が食料品をはじめ物価高騰に苦慮する姿は、日本の現状、あるいは将来を暗示していると言っても過言ではない。

 ただし、ハワイは農業大国米国の1州である。日本が食料品を輸入しているのは海を隔てた「外国」であるという点では大きく異なる。食料自給率が低いまま、日本の農業が縮小し、将来、食料危機が起きた場合、他国が日本を優先的に支援してくれる保証はない。安易な外国依存が危険であることは明白であり、食料価格のさらなる高騰リスクも現実味を帯び始めている。


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