大きな政府が逃げられない人を作る
大きな政府は、多くの場合、きれいな言葉で語られる。支援、安心、分配、包摂、少子化対策、物価高対策。どれも否定しにくい言葉である。
しかし、政府が引き受ける仕事が増えれば、必ず財源が必要になる。財源は空から降ってこない。誰かが負担する。そして、その負担は最も取りやすいところへ向かう。
最も取りやすいのは、所得を把握しやすい人である。つまり、給与所得者である。税と保険料を天引きでき、毎月の生活費から逃げにくく、仕事も家族も地域も簡単には捨てられない人である。
大きな政府は、逃げられない人から取るだけではない。大きな政府そのものが、逃げられない人を作る。
給付を受けるには条件を満たさなければならない。補助金を受けるには申請しなければならない。社会保険に組み込まれれば、保険料は給与から引かれる。物価高対策を待つ家計は、政府の支援策に期待せざるを得なくなる。
こうして人々は、自分で選ぶ人から、仕組みに組み込まれる人になっていく。政府が大きくなるほど、人々は政府から遠ざかるのではなく、政府なしでは身動きしにくくなる。
税、保険料、インフレ税が家計を削る
正直に働く人は、三重苦に喘ぐ。
まず税で取られる。次に社会保険料で取られる。そして、見えにくい形でインフレ税に取られる。
インフレ税とは、物価上昇によって人々の購買力が削られることである。税率を国会で決めるわけではない。納付書が届くわけでもない。しかし、同じ給料、同じ預金、同じ年金で買えるものが減るなら、それは家計にとって実質的な負担増である。
総務省統計局「家計調査」をもとに機械的に試算すれば、家計の追加負担は月約1.2万円、年約15万円に相当する。税率を上げなくても購買力は削られる。これがインフレ税である。
25年の毎月勤労統計を見ても、その構図は明らかである。名目の現金給与総額は前年比2.3%増えた一方、物価を考慮した実質賃金指数は前年比1.3%減となり、4年連続のマイナスとなった。
つまり、働く人は賃上げをまったく受けていないのではない。額面の賃金は増えている。それでも生活が楽にならないのは、物価高が賃上げを上回り、実質的な購買力を削っているからである。
