海運業界はすでに「ホルムズ後」を見据えている
今回の危機によって最も大きく変わったのは、ホルムズ海峡そのものの戦略的な意味である。
世界第3位のコンテナ船社CMA CGMのロドルフ・サーデ会長兼CEOは、仏議会公聴会で「ホルムズ海峡が戦前と同じ状態に戻ると想定するのは賢明でない」「たとえ数週間後に和平の解決策が実施されても、後に別の危機が起きない保証はない。我々はホルムズ海峡の囚人になってはならない」と述べたと報じられている。
同社は陸送・鉄道による代替ルートの構築を進め、その追加コストを26年上半期だけで約3億ドルと試算している。湾岸向けの輸送量は危機前の約3分の1にとどまるという。これは単なる一社の応急対応ではなく、業界全体の構造転換を象徴している。
多くの船社と荷主が「ホルムズ海峡が再び止まっても事業を継続できる体制」の構築を急いでいる。業界の問いは、「ホルムズ海峡は再開するのか」から「次の危機が起きても耐えられるのか」へと移りつつある。
今後の3つのシナリオ
今後のシナリオは主に以下の3つとなる。
【シナリオ1】段階的正常化
署名後に機雷リスクの確認と安全航路の設定が着実に進み、保険料も段階的に低下する。船社は順次配船を再開し、数カ月をかけて通常運航に近い状態が回復する。最も望ましいシナリオだが、完全な正常化までには数カ月以上を要すると見るのが実態に即している。
【シナリオ2】管理された再開
海峡は開くが、通航条件や安全確認が厳格化され、船社は選別的に復帰する。保険料は高止まりし、運賃への転嫁が続く。企業の調達・物流コストはしばらく上昇した状態が続く。現時点では、このシナリオが最も可能性が高い。
【シナリオ3】再緊張化
核協議の難航や周辺戦線の再燃により、ホルムズ海峡が再び交渉カードとして利用される。保険料が再上昇し、船社は再び待機・迂回を迫られる。

