危機前には戻らない
日本の原油輸入の中東依存度は約96%に達する。今回の合意による「海峡再開」は、日本のエネルギー・物流構造にとって重要な出来事である。しかしそれは、危機前の世界への復帰ではない。
日本企業が注視すべきなのは、「ホルムズ海峡が開いたかどうか」だけではない。実際の通航隻数、戦争リスク保険料、船社の配船復帰状況、機雷リスク確認の進捗、イスラエル・レバノン戦線の沈静化、そして60日後の最終合意である。これらが揃って初めて、海運は「正常化」に近づく。
一方で、企業側に求められる対応も変わる。これまでは、発注後に船積み状況や到着予定を追いかけることが物流管理の中心だった。しかし今後は、航路、スケジュール、輸送コスト、遅延実績、在庫影響をデータとして蓄積し、代替ルートや在庫戦略の判断材料として使えるかどうかが問われる。
代替調達先はあるのか。迂回ルートは確保できるのか。在庫水準は妥当か。船社やフォワーダーから必要な情報を取得できる体制はあるのか。物流部門が単なる輸送手配部門ではなく、経営判断の土台として機能しているか。
それが、今回の危機が日本企業に突きつけた問いである。
危機前には戻らないという前提で、サプライチェーンを複線化する。その新常態に、海運業界も荷主企業も向き合わざるを得ない。
