Wedge REPORT

2017年4月3日

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行政が一歩踏み出せるか

 成年後見制度の利用を促進するために、昨年5月に成年後見制度利用促進法が施行された。今年1月に利用促進委員会が取り纏めた意見を踏まえ、3月に基本計画が閣議された。しかし、利用促進に向けて国と地方の足並みは揃わない。

 「一律に法律で義務付けるなら、もうこの議論には参加できない!」

 昨年開かれた利用促進委員会の席上、全国町村会の代表として委員を務めていた河村文夫・東京都奥多摩町長が声を荒らげた。各地域での医療や福祉、法律業界のネットワーク作りや、後見を支援する協議会等の運営を行う中核機関を設置しようとする議論の中で出た発言だ。「大都市と違って小さな町村には自治会組織や民生委員が機能しており、成年後見も数件しかない。総論は賛成だが、地方に責任だけ負わされても、財源の手当がなければやりたくてもできない」(河村町長)という。ちなみに、「国の補助はスタートアップにかかる費用のみが対象で、会議費を補助する程度。ランニングコストは地方持ち」(厚生労働省)となる。

 また、ある自治体の担当者からは、「成年後見制度の運営主体はあくまでも社協であり、地域連携も社協が先頭をきっていくべきだ」といった本音も聞こえてくる。そんな「期待」を押し付けられる社協は、「国民の生命や財産を守るのはまさに行政の仕事、一歩踏み出すべきだ。社協も一緒にネットワークを作っていくが、行政に逃げられると困る」(全国社会福祉協議会地域福祉部長・高橋良太氏)と嘆く。

 基本計画では、中核機関の設置は強制力をもたない「努力義務」に留まり、その実効性は疑わしい。しかし、後見ニーズが爆発的に増える事態は目に見えており、地域連携の強化は待ったなしである。国も地方もカネがないなかで、支援の輪をどう広げていけばよいか。「後見先進地域」からそのヒントを探る。

*「先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り―認知症700万人時代に備える(PART2)」へ続く(4月4日公開)

【column】後見人の不正をどう防ぐ 財産の信託化で被害額は半減
 56億7000万円。2014年に報告された後見人による不正額で、事案の9割以上が親族によるものだ。1つの財布で家計を管理する家も多く、「親の金だから使って良いかと思った」という知識不足が原因のケースも多い。後見人が不正を働くと、裁判所は選任責任と監督責任を問われかねず、過去には裁判所の過失が認められたこともある。後見人が親族から弁護士など専門職へとシフトした背景には、「裁判所のリスク回避という側面もある」(元裁判官)という。
 こうした不正の防止策として、「後見制度支援信託」の活用がある。生活費など日常的に支出する金額を後見人は管理し、残りの財産を信託化すれば、家庭裁判所の指示なく払い戻しや解約ができない仕組みだ。「15年には被害額が半減しており、一定の成果が出ている」(最高裁)と更なる活用を勧めるが、取り扱う銀行が信託銀行などに限られていることが課題だ。
 一方、専門職の不正は37件、約1億円(15年)。対策はもとより、「一罰百戒」の厳しい対応が必要だ。
【シリーズ:認知症700万人時代に備える】
PART1:東京23区の成年後見格差、認知症への支援を急げ
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・前編:品川モデル
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・中編:「品川モデル」構築のキーマン・インタビュー
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・後編:大阪モデル
PART3:過熱する高齢者見守りビジネス最前線

  
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◆Wedge2017年3月号より


 

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