世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年8月18日

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 イランの新しい大統領エブラヒム・ライシが8月3日、アリ・ハメネイ最高指導者の認証を受け正式に就任した。6月に行われていたイランの大統領選挙では保守強硬派のエブラヒム・ライシが6割以上の得票率で当選していた(投票率は48.8%と低く、ライバル候補は選挙から排除されていたが)。

 ライシは、同じ強硬派のハメネイ最高指導者から、1979年革命の精神に忠実な「仮借のない」政治家であると称賛されており、強硬派として知られている。ライシは、彼の政府の政策は最高指導者の指針に完全に沿ったものになるだろう、と述べた。

 しかし、そのライシが優先的に取り組むとしているのは経済である。大統領認証式でライシは、2015年の核合意によりイラン経済を改善すると約束しながら結果を出せなかったロウハニ前大統領を非難しつつ、「(自分は)米国の“不公正な”制裁の解除の手段を講じるが、核合意の復活を待てない経済に優先的に取り組む」と述べた。核合意自体の是非については「我々は国民の生活と経済を外国の決定に結び付けるようなことはしない」と言及したのみであった。

 イラン経済は、2018年に当時のトランプ大統領がイラン核合意からの一方的撤退を表明し、イランに対する広範な制裁を復活させて以来、苦境に立たされている。インフレ率はジェトロの統計によれば、2020年に36.5%で、2021年には39.0%に達すると予測されている。

 その上、イランは新型コロナウイルスの災害をもろに受けている。ジョンズ・ホプキンス大学の発表によれば、8月9日現在、イランの新型コロナの感染者数は415万人を超え世界で12位である。死亡者数についても約9万4000人と、世界で13番目となっている。こうした中、制裁によりイラン経済の頼みの綱の原油輸出が滞り、財政がひっ迫しているため、新型コロナの被害に対し十分な支援ができないでいる。

 このようにイランは経済的、社会的困難に直面しており、国民の不満を鬱積し、反政府デモが行われている。したがって、ライシとしては、経済不況の元凶となっている米国などによる制裁の解除を実現するべく、核合意の復活を図ろうとするのは当然である。

 この間にイランによるペルシャ湾での西側石油タンカーに対するドローン攻撃が行われ、直接の被害者イスラエルと英国の他に、米国もイランを非難した。

 攻撃がイランのどのグループによるものかは明らかでないが、イラン政府の意図を反映したものでない可能性がある。

 バイデンは、もしイランが再び合意を守るなら核合意に再び参加し、制裁を解除すると約束している。核合意はイランが核開発を止めれば、それまでのイランに対する制裁を解除するというものである。西側は、イランの中東における勢力拡大の活動には批判的であるが、取り敢えずはイランの核開発防止を最優先させ、核合意を復活させようとしている。

 このように核合意の復活については米国をはじめとする西側諸国とイランの利害は一致しており、今後とも復活に向けての活発な活動が行われるものと思われる。日本としても核合意の復活に向け外交活動を強化することが求められるだろう。

  
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