「正義の天秤」(NHK総合「土曜ドラマ」)は、元外科医という異色の弁護士、鷹野和也(亀梨和也)が、「依頼人に有利」という原則を破っても、真実を明らかにする物語である。つまり、被告を有罪にする、証拠もあえて法廷に提出する。「弁護は治療だ。被告人を救えなければ、正義とはいえない」という、鷹野の核心にある。
外科医だった、鷹野がなぜ弁護士になったのか?弁護士として、無罪判決を4件、一部無罪判決を5件いう成果を上げながら、忽然(こつぜん)と姿を消して、突然、大規模な法律事務所つまり「ファーム」のお荷物集団である、刑事部門のトップとして乗り込んできた理由はなんなのだろうか?
第1回(9月25日)から、ドラマはサスペンスの様相を帯びて、テンポのよいセリフと場面展開によって、観る者をひきこむ。さらに、息詰まる「法廷劇」が際立っている。
若手弁護士・佐伯芽衣(奈緒)の父で弁護士の真樹夫(中村雅俊)が、刑事事件を扱う「ルーム1」をファーム・師団坂法律事務所のパートナーのひとりとして率いてきたが、急死する。民事事件と企業法務のパートナーたちは、全体の売り上げの2%しか稼ぎだせない、「ルーム1」の閉鎖を芽衣(奈緒)に通告する。
父の真樹夫(中村)の遺言書を盾にして、ファームのパートナーのひとりでかつ「ルーム1」のトップに鷹野(亀梨)が就くことを、芽衣(奈緒)は主張する。
トップの真樹夫(中村)の死によって、最盛期は15人もいた弁護士は引き抜かれて、芽衣(奈緒)を含めて、たった4人になった。
真っ二つに分かれる目撃者の証言
第1回の事件は、釣りボート店の店員・保坂修(筧利夫)が、利用客の大手飲食チェーン社長の倉橋龍一郎(宮田博一)をボートの転覆によって、浮き輪を倉橋に渡さなかった結果、死に至らしめた。被告の保坂(筧)は、ライフジャケットを着けていたが、死んだ倉橋は、「暑い」といって、脱ぎ捨てていた。
釣り船の事故をアニメの聖地巡りで島に向かう、客船から多数の目撃者がいた。鷹野(亀梨)の部下たちが、乗客たちに話を聞いて歩くと、見方はふたつに分かれた。「死んだ倉橋が、自分で波にのまれた」とする者と、「被告の保坂が倉橋を沈めようとしたように見えた」という者である。
鷹野(亀梨)の部下たちは「緊急避難」として無罪と主張すべきだ、というのが一致した意見だった。
メンバーの杉村徹平(北山宏光)が、釣り船の事故を目撃した、証人宅を訪れた際に2階に引きこもりの息子がいることが気になって、芽衣(奈緒)とともに息子の証言を取りに向かう。