田部康喜のTV読本

2021年10月2日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「正義の天秤」(NHK総合「土曜ドラマ」)は、元外科医という異色の弁護士、鷹野和也(亀梨和也)が、「依頼人に有利」という原則を破っても、真実を明らかにする物語である。つまり、被告を有罪にする、証拠もあえて法廷に提出する。「弁護は治療だ。被告人を救えなければ、正義とはいえない」という、鷹野の核心にある。

(Zolnierek/gettyimages)

 外科医だった、鷹野がなぜ弁護士になったのか?弁護士として、無罪判決を4件、一部無罪判決を5件いう成果を上げながら、忽然(こつぜん)と姿を消して、突然、大規模な法律事務所つまり「ファーム」のお荷物集団である、刑事部門のトップとして乗り込んできた理由はなんなのだろうか?

 第1回(9月25日)から、ドラマはサスペンスの様相を帯びて、テンポのよいセリフと場面展開によって、観る者をひきこむ。さらに、息詰まる「法廷劇」が際立っている。

 若手弁護士・佐伯芽衣(奈緒)の父で弁護士の真樹夫(中村雅俊)が、刑事事件を扱う「ルーム1」をファーム・師団坂法律事務所のパートナーのひとりとして率いてきたが、急死する。民事事件と企業法務のパートナーたちは、全体の売り上げの2%しか稼ぎだせない、「ルーム1」の閉鎖を芽衣(奈緒)に通告する。

 父の真樹夫(中村)の遺言書を盾にして、ファームのパートナーのひとりでかつ「ルーム1」のトップに鷹野(亀梨)が就くことを、芽衣(奈緒)は主張する。

 トップの真樹夫(中村)の死によって、最盛期は15人もいた弁護士は引き抜かれて、芽衣(奈緒)を含めて、たった4人になった。

真っ二つに分かれる目撃者の証言

 第1回の事件は、釣りボート店の店員・保坂修(筧利夫)が、利用客の大手飲食チェーン社長の倉橋龍一郎(宮田博一)をボートの転覆によって、浮き輪を倉橋に渡さなかった結果、死に至らしめた。被告の保坂(筧)は、ライフジャケットを着けていたが、死んだ倉橋は、「暑い」といって、脱ぎ捨てていた。

 釣り船の事故をアニメの聖地巡りで島に向かう、客船から多数の目撃者がいた。鷹野(亀梨)の部下たちが、乗客たちに話を聞いて歩くと、見方はふたつに分かれた。「死んだ倉橋が、自分で波にのまれた」とする者と、「被告の保坂が倉橋を沈めようとしたように見えた」という者である。

 鷹野(亀梨)の部下たちは「緊急避難」として無罪と主張すべきだ、というのが一致した意見だった。

 メンバーの杉村徹平(北山宏光)が、釣り船の事故を目撃した、証人宅を訪れた際に2階に引きこもりの息子がいることが気になって、芽衣(奈緒)とともに息子の証言を取りに向かう。

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