スポーツ名著から読む現代史

2021年10月14日

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中島章隆 (なかじま・ふみたか)

元毎日新聞運動部長・論説委員

なかじま・ふみたか 1952年長野県生まれ。元毎日新聞運動部長・論説委員。現在は立教大講師、東京プロ野球記者OBクラブ理事。月刊政策情報誌「毎日フォーラム」で2009年から「スポーツを読む」を連載している。

 八角理事長の諮問機関「大相撲の継承発展を考える有識会議」(山内昌之委員長)は21年4月、最終報告書をまとめた。「一代年寄」については「協会の定款に、根拠となる規定がない」としたうえで「存在意義が認められない」と結論付けた。露骨な論点回避だった。

異例の条件付き年寄り襲名

 白鵬の現役引退届提出を受け、協会は理事会を開き、白鵬の年寄「間垣」襲名を条件付きで承認した。年寄襲名に条件が付くのは極めて異例という。その条件とは「新人の親方として、理事長はじめ先輩親方の指揮命令・指導をよく聞き、本場所等、与えられた業務を誠実に行うこと」「大相撲の伝統文化や相撲道の精神、協会の規則・マナー、相撲界の習わし、しきたりを守り、そこから逸脱した言動を行わないこと」。白鵬は誓約書にサインしたという。

 大相撲の過去の記録をことごとく塗り替えたモンスター力士を親方として迎え入れる協会側の警戒感と不安、恐れが露骨なまでに表れている。10年前まで、相撲界に巣食っていた野球賭博や八百長などの不祥事を招く温床を放置していた協会幹部は、きちんと総括し、出直したのか。大相撲の存亡の危機に、土俵上でファンの心をつなぎ留めてきたのは白鵬ではなかったのか。

 一方的に白鵬の肩を持つつもりはない。だが、協会関係者がここ数年、お題目のように白鵬批判に使ってきた「横綱の権威」やら「品格」は、白鵬にはすべて承知の上で協会の力量を測るかのように、挑発し続けているように映る。

 この10年の間に、大横綱の大鵬や北の湖、千代の富士が亡くなり、貴乃花は協会を離れていった。年寄「間垣」が仮に〝暴走〟を始めたとき、だれが止められるのだろうか。

 協会VS.間垣の新たな戦いが始まりそうだ。『相撲よ!』の続編が待たれる。  

  
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