世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月27日

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 バイデン政権が掲げる「労働者中心」の貿易政策は、政治的見返りを狙いとする保護主義であると断じても過言ではないであろう。このことは、鉄鋼セクター保護政策ひとつとってみれば明らかである。

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 例えば、フィナンシャル・タイムズ紙貿易担当ライターのアラン・ビーティーは、12月12日付けの同紙論説‘Biden’s trade policy is crafted with political rewards in mind’で、バイデン政権の貿易政策には決まって「労働者中心」という陳腐な形容詞が付くが、そのことはすべての労働者を平等に助けることを意味せず、政治的見返りが得られる部分の製造業に対する保護主義の様相を呈していると指摘して、鉄鋼に対する関税の問題を論じている。この論説の趣旨には賛成できる。

 バイデン政権は、戦略的ないし野心的な貿易政策を全く欠いている。10月には対中貿易政策の見直しを終えたとされたが、それはトランプ政権の政策の継続に他ならない。

 2020年の「第一段階」の合意における中国の対米輸入のコミットメントの実現がそのほぼすべてであり、中国の国家補助や国営企業の問題を交渉する「第二段階」に移行しようとの意欲はどこにも見当たらない。

 欧州との関係では、確かに進展はあった。6月に航空機補助金を巡る紛争を止め、相互の懲罰関税を5年間停止することに合意した。10月には鉄とアルミについて(18年にトランプ政権が国家安全保障を理由に鉄には25%、アルミには10%の関税を課した)、関税が課せられた当時の輸入水準まで米国が無税のクォータを設ける(2年間)ことで欧州連合(EU)と合意が成立した。

 いずれも有益な合意であり米欧関係の円滑化に資する合意であるに違いないが、いわば必要最小限の措置であり、とても戦略的なイニシアティブと言えるようなものではない。

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