2023年1月31日(火)

バイデンのアメリカ

2022年7月12日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 最高裁は、続いて6月30日には、国政選挙の実施、運営方法について、州政府当局の関与も認めるべきだとする南部諸州の訴えを正式受理、今秋にも審理することを決めた。司法専門家の間では、勢いに乗った保守派判事の見解から判断して、最終的に「州政府関与合憲」の判断が下される公算大、との見方が広がっている。

 もし、合憲判断が正式に下された場合、11月中間選挙の投票結果について、一部の保守系諸州において、州当局が票数の「最終認証」拒否、郵便による事前投票否認といった超法規的措置を打ち出し、リベラル派との対立で大混乱となる可能性も否定できない。

 さらに最高裁では、右派強硬派として知られるクラレンス・トーマス判事が「女性の中絶権のみならず、この際、他の幾多の権利についても、再考していく必要がある」との見解を表明しており、夏休み明けの今秋中にも、避妊薬販売・使用、同性愛結婚など、個人の自由に関わる問題についても、相次いて、時代に逆行する判断が打ち出されることも十分予想されている。

 そのトーマス判事については、最近、タカ派で弁護士のジニ夫人が20年大統領選挙結果に関し、当時、マーク・メドウズ大統領首席補佐官宛てに「選挙結果の転覆」を促す電子メッセージを送るなど、バイデン当選妨害工作に関与した疑いが浮上。「連邦議事堂乱入・占拠事件」を真相解明中の下院特別委員会に喚問が予定され、大きな話題となっている。

信頼低下し続ける司法と三権分立

 こうしたことを反映し、最高裁に対する国民の信頼もこれまでになく低下しつつある。

 米「マーケット大学法学大学院」の最新世論調査によると、「最高裁を評価する」と回答した人は「44%」だったのに対し、「評価せず」が大勢を占めた。信頼度は昨年度調査時から「14%」も下落したという。

 しかも、「支持政党別」の分析では、共和党支持者の「71%」が評価したが、民主党支持者の間ではわずかに「28%」にとどまっており、ここでも、イデオロギーをめぐる米国社会の深刻な分断ぶりを如実に反映したものとなっている。

 いずれにしても、こうした多くの問題を抱えつつある最高裁が今後、多少とも「正常化」に向かう可能性はあるのか。

 ワシントン専門家の間では、最高裁判事が終身任用制であるだけに、健康上の辞任、不慮の事故などがないかぎり、現在の布陣に変動はなく、近い将来にわたり、保守派主導の「絶対的支配体制」が維持されるとの見方が支配的だ。

 先進民主主義諸国では、立法、行政、司法の「三権分立」体制の下、公平・中立の精神に立脚した「司法」だけは、それなりに威厳と権威を保持してきた。

 しかし今や、米国ではその「司法」は、国家のたんなる恣意的1機関となり下がり、デモクラシーそのものを脅かす存在になりつつある。

  
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