2024年3月1日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月2日

liulolo/Gettyimages

 最近、米国の対中、対アジア政策に貿易が欠如していることを批判する論調が散見される。それらは総じて米国による環太平洋経済連携協定(TPP)再考を示唆する。

 1月3日付の米ワシントン・ポスト紙の社説‘America needs a better China trade strategy’(米国はより良い対中貿易政策が必要)も、こうした論調の一つである。同社説は、12月にアジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)が発表した「TPPの再考:米参加を容易にするための修正案」報告に大きく依拠しながら次の通り主張する。

①米国の対中均衡化努力の中で欠如しているのは貿易戦略である。最近のウェンディ・カトラー(元・米通商代表部(USTR)次席代表代行、オバマ政権でTPP交渉を担当)らによるアジア・ソサエティ報告は、米国のTPP再考を容易にするためのTPPの規定強化など(再交渉)につき確固とした提言をしている。

②貿易を米国の経済的競争力と対中安全保障の強化策の一環として推進すれば、TPPにつき今や議会などの賛成が得られるかもしれない。

③中国は、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定推進後、TPPへの加盟を推進、加盟国に圧力を掛けている。豪州、日本は当分その加盟を拒否するであろうが、米の不在は中国に経済、外交上の利点を与えている。

④産業政策の推進や半導体の輸出規制強化、対中産品関税の維持だけでは、不十分だ。米国は、輸出市場拡大とともに中国の影響力均衡化のために能動的な経済戦略を必要としている。米国は、未だ米国の条件で太平洋貿易を議論することが出来る時に、それに目を向けることが賢明だ。

*   *   *

 この社説の主張は、その通りである。バイデン政権の対中貿易政策は全く不十分だ。米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」は、迫力を欠く。形式的には貿易も入っているが、実際上は貿易抜きのイニシアチブだ。もっと大きな視座がないと中国を含む現下の課題には対応できないだろう。

 そもそも地域の国々にとり貿易利益のない枠組みは魅力を欠く。唯一の救いは、現在、中国を含め世界の貿易イニシアチブがストップしていることである(米民主党の左派などは、それは成功と言うかもしれないが)。

 外交、安保分野での大きな成功にも拘わらず、バイデン政権の対外政策に物足りなさがあるのは、やはり貿易が欠落しているからであろう。貿易は国際秩序の重要かつ不可欠の部分である。


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