NZのキャンプ場で垣間見たLGBT、片親ファミリーの人々
旅行中気づいたのは男性2人、女性2人で旅行しているカップルが多いことだ。欧州のリゾートでもそうしたカップルは頻繁に見かけたが、NZではよりオープンな雰囲気で2人の時間を楽しんでいるようだ。
例えばスプリング・クリークのキャンプ場。夕焼けの河畔の小径で手を繋いで散歩していた女性のカップル。食後にキッチンで仲良く皿洗いしていた中年男性のカップル。筆者の隣にテント設営していた40代の男性カップルは夕食後静かにウイスキーを飲みながら語り合っていた。
日本でも同性婚を法律上認めていないのは憲法違反であるという判決が出され国会でも議論の俎上に載せられているが、法制化への道筋は見えない。まだまだ同性カップルは日陰の存在だ。NZでは10年前に同性婚が法制化された。法制化により社会全体の認知が深まりLGBT当事者も安心して暮らせる環境が醸成されてきたのだろう。
さらにキャンプ場で極めて頻繁に見かけたのが離婚して片親が子供を連れて休暇を楽しむ姿である。少し立ち話をしているとすぐに離婚したことを明かす。日本では離婚したことを初対面の外国人旅行者に積極的に話すことは考えられないだろうが、NZではなんら躊躇ない。
離婚もバツイチもその当人の経歴や社会的評価でなんらマイナス要因とはならないという社会通念が確立しているのだ。
NZが多様性国家を目指す切実な理由
ザ・ストアというキャンプ場で知り合ったNZの元外交官の言葉を思い出した。「NZは建国以来常に労働力が不足していた。労働力確保は現在にいたるまで国家の至上命題なのです。そうした背景から先住民の人々も含めて幅広く多様な人々を社会の一員として受容して国家の建設と運営に参加してもらうことが必要不可欠なのです」との解説。
人道主義や博愛主義という理想論でなく労働力確保という現実の国家運営の必要性から英国移民中心の白人国家から先住民やアジア系移民を含めた多様性国家に変わってきたという分析である。LGBTの人々や離婚経験者も含めて社会の一員として尊重して受容することも元外交官氏の指摘の延長線上にあるのだ。
日本の国会での議論を聞いていると多数派の与党は、外国人労働者の定住は認めない、同性婚は認めない、LGBT保護には消極的、などなど多様化社会にブレーキをかけている。“全員参加の活力ある社会”という政府のスローガンが空念仏に聞こえる。
以上 第3回に続く