2024年4月27日(土)

田部康喜のTV読本

2014年7月2日

音楽によって芸術の魂を揺さぶられる

 美術家の奈良美智と、歌手の木村カエラ(6月26日)の第1夜もまた、孤独な幼少・青年時代を送ったふたりが、音楽によって芸術の魂を揺さぶられる「自分史」が語られた。

 いまや日本を代表する画家・彫刻家である奈良は、幼女が下から見上げるような視線の絵で一般的にも知られるようになった。

 奈良の人生には、いつもパンクロックがあった。弘前市の高校生時代、自宅のガレージを改築して喫茶店を開き、アメリカから通信販売でさまざまなレコードを取り寄せた。そして、深夜に東京のラジオ局から聞こえてくる深夜放送で紹介される音楽である。

 奈良が2曲目に選んだのは、デヴィッド・ボウイの「STARMAN」である。

 歌詞のように、空を見上げると、本当に空の上にスターマンがいるようにみえたという。

 武蔵野美術大学に入学したのも束の間で、1年生を終えると欧州の放浪の旅に。学費を使ってしまったので、学費の安い名古屋の公立の美術学校へ移る。アルバイトで美大を目指す予備校の講師を務めた。

 「先生、先生、と呼ばれるうちに、これはいかんと思って。教えるのには自分が学ばなければいけないと」「予備校の学生たちに、君たちと同じように僕も学校を目指す、といってドイツの美大を受験するわけです」

 名古屋でも地元のパンクロック、ドイツでもパンクロックにはまった。

 そして、奈良は幼女の絵画によって、自分の独自性を発揮することになる。

 対談相手の木村カエラは、中学生時代から歌手を目指しながらも、そのチャンスはなかなか訪れなかった。彼女はいつでも個性的であろうとした。

 「歌もファッションも、ヘアスタイルも、プロモーション・ビデオの編集も自分でやらなければ気がすまなかった」

 彼女が選んだ曲は、その時代、時代で、新しい音楽の領域を切り開いた若者たちの音楽だった。


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