間伐率も加味してコンセプトを決定
こうしたさまざまな種類に、間伐の強度すなわち間伐率を加味して、間伐のコンセプトが決まる。収益性、残存木の価値向上、費用軽減のバランスをとりながら、間伐方法と間伐率を決め、現地で間伐調査を行い、間伐木を選定(選木)して、間伐量を把握する。
列状間伐では、地形図を参考にして基準となる伐採列の方向を決めれば、あとは1伐2残とか1伐3残とか機械的に伐採列は決まっていく。植栽列がはっきりしなければ、伐採幅5メートル(m)残存幅10mというようにすればよい。
点状間伐では、なかなか一筋縄ではいかない。材積間伐率が30%ならば、3本に1本の選択を基準にしつつ、不良木や劣勢木を優先してマークする。
現地に立てばあとは自分の感性で選択していくのみである。ある程度調査したら、標準地(例えば20m四方)を作り、材積間伐率と本数間伐率の比率を検証し、前者が30%になるように間伐本数を調整する。複数の調査員が、この標準地の選木について目慣らしすることによって、全林分にわたって均質な間伐ができるようになる。
ところが、同じ林齢の林分でも個所によって均質でないことがある。概して沢筋(沢の近く)の林木は成長がよく、尾根筋(山の高い所)は悪い。また、沢筋は本数密度が低く、尾根筋は高い。
これは尾根筋より沢筋の方が肥沃であることのほか、植栽時に沢筋には前生樹の枝条が大量に投げ込まれていたり、沢筋から尾根筋へと下から植栽していくと苗木が余ってきて、植えていくにしたがって余さず植えようとするので植栽間隔がだんだん短くなるからである。そうなると沢筋は無間伐で、樹高が低くて小径木が密集した尾根筋は伐り捨て間伐ばかりで、中腹で間伐量を確保することになる。
さて、間伐調査は、その後の林分の成長や価値の行方に多大な影響を与えるものだけに、慎重にならざるを得ない。森林所有者は、林木を大事に思うあまり、つい伐採本数を控えめにしてしまい、間伐の効果を上げられないことがある。このため「選木は、他人の山と思ってしろ」と言われる。
ところが、進まぬ間伐に業を煮やした行政が繰り出したのが収益性の高い強度間伐で、材積間伐率で40~50%はある。上層間伐なので林冠が疎開して、極端な場合は略奪的に見える。金になる大径木や優良木から伐採され、残存木は不良木や劣勢木が多いのでみすぼらしい。これなら皆伐した方がよほどましである。
これまで蓄積された間伐に関する多くの理論や知識を千変万化の現場に適用させて、いかに良い森林と木材を生み出すかが、林業家に課せられた使命であり、また喜びでしょう。