2024年11月24日(日)

勝負の分かれ目

2024年1月30日

 制度開始当初は、メジャー全30球団の中で最高額で落札した球団のみが、選手と独占的に交渉することが認められた。このため、海外FAとは違って、選手が希望する球団を交渉先に選ぶことはできず、条件面でも折り合いがつかなければ、移籍自体が消滅する仕組みだった。日本の所属球団は選手の移籍が成立した場合のみ、落札額を移籍先の球団から受け取ることができた。

 近年は、獲得を希望する全球団と選手が交渉することができ、契約したメジャーの球団が日本の所属球団に規定の譲渡金を支払うようになった。山本投手を例に挙げれば、オリックスは70億円超を手にできる。

 選手にとってみれば、申請手続き期間と、移籍の交渉期間がメジャー側に通知された翌日から45日間という縛りがあるものの、譲渡金の発生以外は海外FA選手と変わらない(25歳未満の選手に関しては後述する)。山本投手が複数球団と交渉した上で、自らの希望や条件面を考慮してドジャースと契約したのが最たる例である。今永投手、松井投手の契約においても、移籍方法の違いが条件面に影響を与えた点を見出すことは難しい。

 ただし、佐々木投手のように25歳未満の選手には大きな制約がある。それが「25歳ルール」と呼ばれるもので、メジャーの労使協定でドラフト対象外の外国人選手とはマイナー契約しか結ぶことができず、契約金、年俸を含めた総額も低く抑えられる。このため、日本の所属球団への譲渡金も少なくなる。

実は球団によって異なるポスティングの運用

 ポスティングシステムについて、選手側の最大のメリットは、若い年齢でメジャーへ挑戦できる点にある。海外FA権の獲得には高卒でプロ入りして早くから1軍で活躍しても、20代後半になる。年齢や〝勤続疲労〟などでけがのリスクも高まり、長期の大型契約を結びづらくなる。25歳の山本投手が12年契約を結ぶことができたのも、ポスティングシステムの恩恵が大きい。

 対する球団側のデメリットは、トップ選手の流出がある。山本投手、今永投手、上沢投手とそれぞれチームのエース格を失う球団は、戦力をどう補うかという課題をクリアしなければならない。一方で、メリットとしては、海外FAなら譲渡金が入ることなく移籍されるが、ポスティングシステムなら若い全盛時の選手が移籍することで、譲渡金額も多く入り、戦力補強や球場施設の充実などの費用を補うことが可能になる。

 制度としては12球団で統一されているポスティングシステムだが、球団によって「運用ルールにばらつきがある」というのが最大の課題だ。


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