2024年11月24日(日)

勝負の分かれ目

2024年1月30日

 例えば、ソフトバンクは現状、ポスティングシステムによるメジャー挑戦を容認していない。このため、エースだった千賀滉大投手は、ポスティングシステムによる移籍はかなわず、22年オフに海外FA権を行使してメッツと契約した。ポスティングシステムを容認するほかの球団でも、プロ入り何年目なら認める、リーグ優勝や個人でのタイトル獲得など球団への一定の貢献があれば認める――などの容認の基準は曖昧である。

 ポスティングは「球団の容認」を大前提としている以上、「基準を明確にする必要はなく、NOと言えば、それ以上の進展がなく、それがルールだ」という意見がある。一方で、日本のプロ入りはドラフト会議の指名によるため、選手側が入団先を選ぶことはできない。選手はポスティングシステムの運用ルールがどうであっても、頑なに入団拒否をしない以上は、指名された球団に入ることになる。

 選手は、まず移籍を要望するところからスタートし、球団に認めてもらうための話し合いが必要になる。近年は、選手のポスティングシステムによる移籍について、ファンも後押しする傾向にあるが、過去には球団が認めないときに「わがまま」などと批判された選手もいた。

 佐々木投手のケースでは、一部の報道が先行して出てしまったことで、インターネット上でもメジャー移籍の時期について賛否が割れる事態を招いた。スポーツ紙の報道によれば、ロッテの松本尚樹球団本部長は契約更改後の会見で「一部報道にあったような、(佐々木投手が)わがままを言っているとか、ごねているとか、全くそういうことはなく、こちら側にも至らぬところがあった」と釈明した。

日本球界のための制度を

 日本球界全体でみた場合には、ドラフト下位指名の選手はともかく、将来的にメジャー移籍が確実な選手をくじで引き当てた球団だけが「譲渡金」を受け取ることができるという制度にも是非はある。実際、山本投手や今永投手に関しては、日本の所属球団がこれまでに支払ってきた推定年俸総額以上の譲渡金を手にすることになる。

 また、容認する球団とそうでない球団があるのなら、海外FA権の取得期間を短縮し、ポスティングシステムそのものを廃止すべきとの意見を口にする球界関係者もいる。しかし、こうした場合には、日本球界は一円も手にすることなく、トップ選手が流出する事態を招いてしまう。しかも、近年は若い選手の移籍を容認する傾向が強まっている。

 12球団統一でのポスティングシステムの「運用基準」について、議論することが選択肢にあっていいだろう。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る