科学で斬るスポーツ

2015年5月22日

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 卓球のラリーで重要な3要素は「回転」「コース」「スピード」。この3要素について、守備側は「予測すること」、攻撃側は「予測させないこと」が重要になってくる。

 世界トップ選手のサービスの平均回転数は、男子は1秒間に約45回転、女子は約40回転。ドライブでは1秒間に170回転に達することも報告されている。吉田教授は「サービスは、スピードを高めることが難しい。回転が単に強いことより、サイドスピンなのか、バックスピンなのか、トップスピンなのか、回転が強いのか、弱いのか、相手に予測させない、わかりにくく回転をかけるテクニックを持つことが得点するポイント」と指摘する。

 ドライブやスマッシュなどによる強打時のボールの速さは、秒速30メートル近くに及ぶことがある。もちろん速く返せば、ノータッチで決まる率は高まる。図5のように、相手が打ってからの待ち時間、0.3秒未満の速いボールが、ノータッチで決まる確率は75%と極めて高い。相手打球への対応が時間的に難しいからだ。一方で、0.6秒以上かかると、対戦者が全てのボールをラケットにあてていることを意味する。

 回転、コース、スピードを戦略的に考慮して、いかに球威を増すかが重要になってくる。

中国の強さはどこにあるのか

 男女ともに個人ランキングのトップ4は中国が独占している。強さの秘密はどこにあるのか。

 中国の強みはなんと言っても人口の多さ。育成システムもしっかりし、才能のある子どもを吸い上げるシステムが確立している。

 吉田教授は10年ほど前、「中国の強さはどこにあるのか」ということに疑問を持ち中国を訪問し、ナショナルチームなどトップ選手を多く輩出した小学校を視察したことがあるという。そこで印象的だったのは、元気に明るく卓球に取り組む小学校低学年の子どもたち。練習の合間に、我々に中国語で話しかけてくるなど、日本の卓球教室での子どもたちとよく似ていると感じられた。

 「中国では、トップレベルを目指す子どもたちが、どのような練習やトレーニングで素早い反応動作を習得しているのかと思って、調査に行ったが、特別な方法はみつけられなかった。しかし、指導者が近くの幼稚園を訪問し、運動遊びで優れていると感じた子どもに声をかけると、ほとんどの子どもが卓球をするためにこの小学校に進学してくるという環境は、中国が世界トップに君臨する要因の一つと思った」と吉田教授は語る。

2020年の東京五輪に向けて

 来年に控えているリオデジャネイロ五輪は、2020年の東京五輪で王者中国を追い抜くための前哨戦となる。2000年以降、福原愛らの活躍による卓球ブーム、それに合わせるように進展する科学サポート。小学生の中にハイポテンシャルな選手は多い。ただ、卓球は今や、激しい情報戦でもある。伊藤美誠が今回の世界選手権でベスト8に進出したのも、「研究されていなかった」ことも指摘される。日本は着実に進化しているが、世界のライバルが日本をマークする中で、技術を磨き、情報を駆使した戦術をどう組み立てていくか。卓球から目が離せない。

  
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