2024年11月23日(土)

World Energy Watch

2021年4月27日

温暖化商人中国と対峙する米国

 中国は自国での大きな需要を背景に、世界の太陽光発電設備を押さえ、風力設備については欧米と市場を分け合っている。蓄電池については大きな製造量に加え、原料となるレアアース製造を押さえている。先進国が温暖化対策を進めるほど、中国依存は深まる構造だ。

 米バイデン政権は、この中国依存からの脱却を図っているように見える。トランプ前大統領の大統領令を次々と覆すバイデン大統領だが、引き継いでいる政策もある。2018年に導入された太陽光パネルに対する課税だ。バイデン政権が目指す太陽光導入拡大の妨げになるとして廃止の要請が業界団体、一部民主党議員からも出されていたが、課税継続を政権は決めた。5億枚の太陽光パネル導入を目標としている政権にとっては、課税廃止による太陽光パネル価格引き下げが望ましいように思えるが、バイデン政権は中国依存ではなく国内生産を目指すようだ。

 その姿勢は、中国との技術協力も行い温暖化対策を進めようとしたオバマ政権とは明らかに異なっている。オバマ政権発足後、米中両国はエネルギー環境分野で協力することを決め、米中クリーンエネルギーセンターを設立した。協力分野は、EV、再エネ設備、省エネ住宅、原子力と多岐にわたったが、米エネルギー省の該当するホームページは、トランプ政権発足後の2017年4月から更新されていない。米中の関係は10年前とは大きく変わった。

 オバマ政権発足前、米国は世界一の製造業大国の地位を維持していた。1980年代から90年代前半にかけ、日本が米国の地位を一時脅かしたことがあったが、日本は勢いをなくし中国もまだ台頭していなかった。だが、オバマ政権発足後中国の製造分野の付加価値額は、米国を抜き世界一になった(図-4)。単純な製品を作るだけと考えられていた中国は、急速に技術力を付け、いまや特許保有件数でも米国に迫っている(図-5)。

 

 米国民の中国に対する目も厳しくなった。オバマ政権発足直後2009年のギャラップの調査では、中国を好ましいとする意見が41%、好ましくないは51%だったが、今年2月の調査では好ましい20%、好ましくない79%だ。米国民が好ましくないとする競争相手と技術協力を行うことはないだろう。


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