2024年12月9日(月)

都市vs地方 

2023年12月18日

 市区町村作成の水害ハザードマップで、国が指針で定める事項の一部が記載されていないケースが多いと、2023年10月、会計検査院が指摘した。水害ハザードマップは、津波や洪水などが生じた際の住民避難に用いられることを想定して、16年に改正された水防法により市区町村に作成が義務付けられている。10月13日付の読売新聞オンラインによると、会計検査院が抽出調査した375市区町村のうち8割超で、河川に近く早期の立ち退き避難が必要な区域、要配慮者利用施設、水没の恐れがあるアンダーパスや土砂災害警戒区域などが未記載であった。

 こうした水害ハザードマップは、人々が水害に直面した際にどのように避難するか考えたり、自身の住まいやその近隣の危険度を把握したりするのに欠かせない情報源で、そこに必要事項が記載されていなかったことは大きな問題だと言える。一方で、未記載の理由が、マップが見づらくなることを避けるためであったとも報じられており、作成したマップが見づらくなって人々に利用されなければそれはそれで問題である。

 情報をもらさず記載することと利用しやすさとの両立は難しいながらも目指すべき目標であると言える。では、現段階で、人々は、実際に水害に対する備えを意識して暮らしているのであろうか。

水際の地価

 図1は、23年の公示地価を用いて、東京都における、川や湖、海といった水のある場所(水涯線)までの距離と地価との関係を簡単なヘドニック分析により求めたものである。ヘドニック分析とは、ある場所の地価を決める要因として、その場所の利便性や規制がどの程度重要であるのかを回帰分析により求める手法である。

 23年の公示地価を用いて、離島を除く東京都の標準地のうち、住宅として使用されているものについて、ヘドニック分析を行い、最寄りの鉄道駅までの距離や都心(渋谷や新宿などの山手線の主要駅)までの距離といった利便性の指標、容積率といった規制の影響をとらえる指標などと地価との関係を求めた。そのうち、立地に関わる要因のみをとりだして図示したのが図1である。

 図では、最寄り駅までの距離、都心までの距離、そして、水涯線までの距離と地価との関係を示している。縦軸は距離が1%増えると地価が何%変化するかを表しており、図中の点はその推定値、その上下のひげは推定値の散らばりそうな範囲(95%信頼区間)を示している。


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